キノッテ
2013-12-25


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「え?キノッテ?」
〓その場にいた全員の頭の上にはてなマークが回転しました。学生の頃、大手精密機器メーカーの工場で夏休みの短期アルバイトをしていた頃の話です。その頃から南米出身の日系2世、3世の方が日本の製造業の現場に多く働きに来られるようになっていました。彼もその中の一人、日系ペルー人3世で、ご両親やご兄弟揃っての来日でした。確か高校生ぐらいの年齢だったと思いますが、日本語会話での私達とのやり取りではほとんど不自由がないぐらいのレベルでした。
〓さて冒頭の単語、みなさんはお分かりでしょうか?休み明けの朝、みんなでたわいのない話をしていた最中に飛び出した一言でしたが、彼はアブリル・ラヴィンのCDを買ったことを伝えたかったのです。よく訊いてみると、それはいつ買ったのかということで、2日前だと言いたかったらしいのです。つまりおととい。彼は私達の理解を促すため、説明を続けます。1日後がアシタで2日後がアサッテ、1日前がキノウなら2日前はキノッテじゃないか、と。
〓他の同僚はどう思ったかわかりませんが、私は拍手を送りたい位に得心しました。確かに規則的に類推すればそれが間違いだとは思わないでしょう。アルファベットの言語圏の人はそういう風に論理的な考え方をするのかと、非論理的な思考しかできない頭で考えてしまいました。
〓今調べてみると英語やフランス語、そして彼の母語スペイン語も「おととい」という概念を直接指すのではなく、「昨日の前の日」といった間接的な表現になるようです。ですから「きのう」という言葉を使った何か別の表現で「おととい」を表すと考えたのでしょうか。考えてみれば、日本語にしても漢字で書けば「一昨日」となるわけで、これでは本来の意味「遠い日」よりも昨日の前の日と考えてしまいます。
〓それはさておき、言語を習う、教わる場合、ある程度の規則性に基づかなければ両者共に収集がつかなくなってしまいます。またその規則性を文法として用いることで、その言語内で話者同士の共通理解を保つことができます。ただその規則性を一から十まで全て教えることはかなり難しく、その国に生まれ育っていないとわからない部分もあるでしょう。従って冒頭の彼のように、知っている規則性から類推することも時には必要な気がします。
〓確か中国の諺に、人に魚を与えるのではなく釣り方を教えなさい、というのがあったように思います。人に何かを教えるとは即ちこういうことなんだろうなと、自戒を込めて書いてみました。
〓今日はクリスマスですね。2013年も終わるのに、はて、今年は何をしてたかな?そんな状態です。来年はもう少しゆとりを持ちたいものです。
〓それではみなさま、どうぞ良いお年をお迎えください。Joyeux Noel!
[多文化]
[日本語]

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