現在も続いている長寿番組「探偵!ナイトスクープ」、私も毎週観ていましたが、30年ほど前に「アホ・バカ分布図」という企画が放送されました。
これは、ある大阪生まれのサラリーマンの男性が、東京出身の妻と言い争う際に、自分は「アホ」妻は「バカ」と言いあった経験から、「ふと『東京と大阪の間に「アホ」と「バカ」の境界線があるのでは?』と思い、「東京からどこまでが『バカ』で、どこからが『アホ』なのか調べてください」と番組に依頼してきたことで始まった企画でした。
当時の番組プロデューサーだった松本修さんは、その後30年の歳月をかけ他の言語にも調査を展開して分布図を作り上げました。
これが今年出版された「言葉の周圏分布考」という本です。ちょっと紹介しましょう・・・
と言っても、図書館からの借りものですが。ちなみに松本さんは滋賀県出身の方です。
「アホ・バカ分布図」を作成してわかったのは、アホ・バカと同義の20ほどの方言が京を中心点として同心円を描いて分布しているということだったのです。
この結果から方言は原則として京都を中心に同心円上に分布したのではないかと考えました。この仮説を証明するため、全国の市町村に方言アンケート用紙を送付し回収結果から分布図を作成していきます。
さかのぼること昭和の初め、柳田國男が32語の方言で独自に調査を行い、その中の「カタツムリ」の呼び名の方言分布を分析して「方言周圏論」という考えを打ち立てています。
古語は首都であった奈良・京など近畿を中心にして、段々にいくつかの圏を描くであろう、と論文に表しました。
松本さんはこの説に忠実に従い、コンパスで同心円を描いていったのでした。
専門家の研究によれば、マスコミもなかった時代、京から地方へ言葉が「口伝て」で伝わる速度は直線距離で1年間930mとのこと、約1Kmです。東京までは400年、東北・九州の端っこまでたどり着くのに700〜800年の言葉の旅となります。
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