自分が幼児期にどうやって母語(例えば日本語)を覚え、話せるようになったかを記憶している人はいないでしょう。
日本に生まれて日本語環境にいたのだから自然と日本語を話せるようになった、と多くの人は思っているのではないでしょうか。
そうではなく、赤ちゃんの時期に努力して勉強したからだ、ということを書いてあるのがこの著書です。
著者はさまざまな文献や研究者の実験結果、あるいは自らの研究や観察結果を基に各項目を書かれていますが、へぇと思うようなことも書いてあります。
赤ちゃんは単語らしきものを発するのに1年、簡単な文が言えるようになるまでさらに1年、身近な人と意思疎通ができるようになるのにさらに1年と言われています。
つまり最低3年を要するわけですね。(個人差あり)
それも先生や教科書なしの独力でやらなければならないのです。
母親が単語などを教えているじゃないの、と言われるかもしれませんが、これも案外通じていない、と書いています。
赤ちゃんに単語を教えるのに母親がものを指さしてその名前を言って教える、という方法は一般的ですが、これは「指をさした先にあるものの名前を今から言う」という決め事がわかっていれば通用するのであって、そもそも赤ちゃんは指さしの意味がわからないのです。
それ以前に赤ちゃんはものに名前がある、ということがまずわかっていません。このようなエピソードが書いてあります。
ヘレン・ケラーは1歳半ごろの時に視覚と聴覚を同時に失いました。その後、サリバン先生の教育を受けるわけですが、手に水をかけられ、「water」というつづりを手のひらに書かれた時に初めてヘレン・ケラーはものに名前があることを知ったというのです。
そして赤ちゃんは、連続した音としか聞こえない大人の発することばから単語の区切り、単語の種類を識別するという作業をしなければなりません。赤ちゃんにとってはこれがたいへんな作業らしいです。
誰も、これは助詞、これは名詞とは説明してくれません。
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