ご存じ(かな?)、大ヒットしたコミック「テルマエ・ロマエ」(古代ローマ時代の浴場設計技師が現代日本にタイムスリップし日本の風呂文化に接する姿を描いたマンガ)
の作者であるヤマザキマリさん。
肩書は漫画家、随筆家、画家となっていますが、イタリア人と結婚され今はイタリア在住です。これまでにエジプト、シリア、ポルトガル、アメリカを経て現在はイタリアと日本を拠点を置かれています。
ヤマザキマリさんの最新のエッセイ本が出たので読んでみました。5年ほど前に「パスタぎらい」という食に関するエッセイを出されましたが、この「貧乏ピッツァ」も同じく世界各国の食に関するエッセイで興味を引く内容、たいへんおもしろい。
まず冒頭で、フィレンツェでの貧乏留学生時代に死ぬほど食べたパスタやピザを今はもう食べたいとはあまり思わない、トラウマでしょうかと書いています。
本書の「素晴らしき日本の食文化」という章の、エピソードを一つ、二つ紹介します。
イタリアの夫の実家で「日本の食事をしてみたい」という姑のために素麺をゆでた時の話。
日本料理のスキルもなく、とりあえず日本から持ってきた素麺を使った。
茹でている素麺を見て姑が「日本にもカペッリーニがあるのね」と言った。
カペッリーニとは細いパスタのこと。髪の毛を意味する「capelli(カペッリ)」が名前の由来。
ゆでた素麺をザルに入れて水で冷やすと、再び姑が「だめよ、パスタを水で洗ったりしちゃ!」
と。
できた素麺をテーブル上に盛り、「見てください、素麺はこうやって食べるんですよ」と
箸ですくった麺をつゆにつけてズズズと啜り上げて見せた。
それを見た家族全員、予想通り表情が固まった。
「そんな食べ方はできない」と姑ら家族はフォークに巻き付けた素麺をつゆにつけて食べるのであった。
食べるや「味がしない。茹でるときに塩を入れ忘れているよ」と指摘される。
そこで日本の料理方法や素材そのものを味わう、というような説明をした。すると舅が
「さすが。日本では味覚にも禅のスピリットを稼働させているわけだ」と深く感心するのです。
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